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保全・強制執行

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保全・強制執行
裁判が始まる前と裁判が終わった後にとる手続き(保全・強制執行)

強制的に相手の財産を押さえる手続きとして、訴訟を始める前に「仮に」財産の差押え等を行う保全手続きと、勝訴判決が出た後に財産の差押え等を行う強制執行手続きの2つがあります。相手が任意に支払ってくれれば問題ないのですが、任意に支払ってくれない場合は、財産を差し押さえて、強制的に売却し、お金を回収します。

保全手続きには ①仮差押え ②占有移転禁止の仮処分があり、
強制執行手続きは ①給与の差押え ②預金・貯金口座の差押え ③動産執行 ④不動産執行 ⑤建物明け渡しの強制執行+動産執行があります、それぞれのメリット・デメリットについてご説明いたします。


【 保全手続き 】

裁判に勝訴して強制執行しようにも裁判を行っている最中に財産を隠されたり、部屋を又貸しされてしまうと判決を取得しても意味がなくなってしまうことが考えられます。そのような場合に備えて、訴訟を行う前に仮に差押え等をすることができます。これらの手続きを保全手続と言います。

①仮差押え
相手が金銭の支払いをしてくれない場合に、唯一の財産である不動産を売却してしまうと回収ができなくなるおそれがあります。そのような場合にその不動産に対して仮に差押えをしておくことができます。仮差押えの後に売買があったとしても、その買主は仮差押えには対抗できず、強制的に売却し、売却代金から回収することができます。

メリット
●仮差押えをしておくことで、相手の財産が減少することを防ぐことができ、勝訴した後に強制執行をすることができます。
●仮差押えをすることで、裁判をする前に相手が任意に支払ってくれることがあります。

デメリット
●財産が不当に減少してしまうという事情を立証しなければなりません。
●不動産を差し押さえる場合、不動産価格の10~20%程度のお金を担保として納めなければなりませんので、不動産の価格によっては予め多額の現金をご用意いただく必要が出てきてしまいます。

②占有移転禁止の仮処分
建物明け渡し請求の場合、入居者に対する勝訴判決を得たとしても、判決が出る前に入居者が別人に対して勝手に又貸しをしていた場合、入居者に対する勝訴判決ではその別人を強制執行で退去させることはできません。しかし、占有移転禁止の仮処分を得ておくことで、仮に入居者が別人に又貸しをしていたとしても、入居者に対する判決をもって退去させることができます。

メリット
●入居者に対してのみ裁判手続を進めていけば良い。

デメリット
●入居者が別人に又貸しをしそうな状況にあることを立証しなければなりません。
●明け渡しを求める建物がアパートなどの住居である場合、家賃の3~6ヶ月程度のお金を担保として納めなければなりませんので、家賃の価格によっては予め多額の現金をご用意いただく必要が出てきてしまいます。


【 強制執行手続き 】

勝訴判決を得たとしても、相手が支払わない場合や退去に応じない場合は下記のような強制執行手続を行って強制的に実現していくこととなります。なお、強制執行手続を進めるための費用や時間がかかるため、相手方の状況によっては判決を得たとしても一定程度の譲歩をして解決した場合が良い方が少なくありませんので、判決を取得したとしても必ず強制執行に進むわけではありません。

①給与の差押え
相手がサラリーマンのように毎月決まった給与収入がある場合は、その勤務先に対して給与の差押えをすることで、毎月の給与から支払ってもらうことができます。

メリット
●相手が退職しない限り、毎月定期的に振り込まれるため、安定して回収することができます。
●会社にとっては、毎月振り込むのが面倒であるため、場合によっては会社が立て替えて一括で支払ってくれることもあります。

デメリット
●給与の差押えの書面が会社に行くことで、相手が信頼を失くし会社を退職せざるを得ない状況に陥ることがあります。もし、退職されてしまうと、以降の回収が困難となる可能性があります。
●毎月の給与から回収できる金額は多くないため、全額回収するまでに長期間を要する場合があります。
●給与は生活の糧となるものですので、原則として給与の4分の1しか差し押さえることしかできません。

②預金・貯金口座の差押え
相手が取引している金融機関がわかる場合、その金融機関の口座に入っている預金等を差し押さえて金融機関から支払ってもらうことができます。

メリット
●給与の差押えのように差押え金額に制限がありませんので、口座にお金が入っていればすぐに全額を回収できることがあります。
●他の強制執行手続と比べるとあまり費用がかかりません。

デメリット
●相手が取引している金融機関(支店名まで)を特定しなければなりませんので、事前に調べておく必要があります。
●口座にお金が入っていない場合は回収が出来ないため、回収するどころか強制執行の費用の分だけ損をしてしまうこともあります。

③動産執行
相手が所有している財産(但し、不動産や自動車または給与や預金等の債権以外の財産)を強制的に売却してその代金から回収する方法です。しかし、下記のデメリットの観点から、給与の差押え等と比べると実際に動産執行を行うケースは少ないと思います。

メリット
●相手が高価な時計や貴金属などを持っている場合にそれを換価して一気に回収できる場合があります。
●執行官が相手の自宅に行きますので、相手に心理的なプレッシャーを与えることができ、それによって支払ってもらえることがあります。

デメリット
●洋服や家具など生活必需品は差し押さえることができません。
●複数の人が同じ場所に住んでいる場合、誰の物かわからないことがあり、その場合も差し押さえることができません。
●そもそも高価な財産を持っているケースが少なく、執行しても効果が無いケースが多いです。

④不動産執行
相手が不動産を所有している場合、その不動産を強制的に売却してその代金から回収する方法です。

メリット
●一般的に不動産は高価であるため、売却できれば一括で回収できる可能性が高いです。
●裁判所の執行官が不動産の撮影等を行うために行きますので、不動産が自宅の場合は心理的なプレッシャーを与えることができ、それによって支払ってもらえることがあります。

デメリット
●不動産執行の申立てをする際に、数十万円の予納金を納める必要があり、こちらを事前に用意しておかなければなりません。
●不動産執行手続はかなりの時間がかかり、売却までに半年から1年程度の時間がかかってしまいます。
●不動産が、すでに別の方の担保になっている場合は、優先的に担保に取っている人が回収していきますので、実際には回収できない場合があります。

⑤建物明け渡しの強制執行+動産執行
判決を取得しても入居者等が退去してくれない場合には、強制執行にて退去していただくこととなります。また、建物内にある家具等の動産を処分しなければなりませんので、動産執行も併せて申し立てます。なお、申立てをしてすぐに強制的に退去していただくのではなく、次のような4つの流れで手続きは進んでいきます。

1) 申立て
裁判所の執行官に対して明け渡しの申立を行います。その際に、予納金等を納める必要があります。

2) 明渡催告
通常は、申立てをしてから2週間程度で、執行官や家主様、司法書士、鍵の解錠業者、動産搬出業者などと共に明け渡しを求める部屋へ行き、強制的に部屋から出て行っていただく日付を入居者に知らせます。その際に合い鍵があれば問題ありませんが、合い鍵が無い場合や、鍵を変えられている場合は、鍵の解錠業者に対する費用がかかります。また、動産搬出業者に家財道具等の搬出・保管・処分の見積等をしていただくこととなります。この費用は部屋の広さや家財道具等の量によって異なります。

3) 明け渡しの断行
期日までに明け渡しがされない場合、強制的に退去していただくこととなり、場合によっては警察に援助を求めることがあります。

4) 動産の保管及び処分
搬出した動産について入居者が引き取るのであれば、引き取ってもらい終了となります。一方、入居者が引き取らない場合は、保管している動産は競売となり、通常は家主様が落札の上、家主様の方で処分していただくこととなります。

仮に断行まで行った場合、退去までにかかる時間や費用を考えると未払い賃料については免除したり、場合によってはある程度の引越代金などを家主様にご負担していただいてでも早期に退去していただいた方が、結果としては時間的にも費用的にも良い場合があります。
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